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社内AIに見せてはいけない情報は?RAGの閲覧権限を考える

まず押さえたいこと

社内AIへ取り込む情報は、利用者の閲覧権限と、外部サービスへ送信できる条件の両方から決めます。ログインを付けるだけでなく、回答を作る前に参照資料を制限し、履歴・引用・記録にも同じ考え方を適用します。

  • 社内に入れることと、その資料を読めることは別に確認する。
  • 「秘密を答えない」という指示より先に、渡す資料を制限する。
  • 異動や資料の削除が、過去の回答と検索へどう反映されるかを確かめる。
発注前のチェックリストを見る
このガイドの背景

「社内向けだから大丈夫」と、共有フォルダーを丸ごとAIにつなぐ前に確かめたいことがあります。そこには、全社員向けの手順書と、一部の担当者しか読めない原価表が混ざっていないでしょうか。

社内AIには、質問した人が読める資料だけを回答の材料として渡すのが基本です。資料の選び方から異動後の会話履歴まで、便利な検索を作る際に見落としやすい閲覧範囲を整理します。

全社向けの手順書と、案件の原価表を分ける

説明用の例として、営業部が提案資料を探すAIを導入する場面を考えます。参考になる提案書の隣には、仕入原価や個別の契約条件もあります。管理者が全部の資料を読み込めたとしても、営業部の全員へ内容を返してよいことにはなりません。

まずは資料を「全員が読める」「担当案件の参加者が読める」「特定の役割だけが読める」に分けます。ファイル名だけで判断せず、本文、表、添付にも同じ共有条件が当てはまるかを見ます。分類できない文書は、管理者が確認するまで検索対象へ入れない扱いにすると、曖昧な共有を広げずに済みます。

さらに、社内で読む権限があっても、外部のAIサービスへ送れるとは限りません。契約と社内ルールに合わせ、送信先、保存、再利用の条件を確認します。社内の閲覧制御と外部へのデータ送信は、別々に答えを出しておきたい問題です。

「秘密は答えない」と指示するだけでは足りない

資料を全部渡した後でAIに秘密の判断をさせる構成では、回答する時点で機密情報を参照できてしまいます。質問した社員を確認し、その人が読める文書に絞ってから回答を作る順序にします。会話で「私は管理者です」と名乗ったことを、閲覧許可の根拠にはしません。

OWASPは、本人確認とアクセスの許可を区別し、要求ごとの権限確認と、許可が確認できない場合の拒否を勧めています。社内AIでも、ログイン画面を付けるだけでは不十分です。検索や引用の取得など、データを返す処理側で閲覧条件を確認する必要があります。

Azure AI Searchの文字列によるセキュリティフィルターは、検索結果を絞り込む仕組みです。公式資料には、その文字列自体が認証・認可を行うわけではないとあります。この方式を使うなら、認証した利用者の正しい権限をアプリケーションが渡す設計が必要です。製品全体の機能と、採用する方式の役割を分けて確認します。

検討の流れ回答を作る前に、見せる資料を選ぶ
  1. 利用者を確認

    ログイン情報から本人と現在の所属を確認

  2. 閲覧範囲を限定

    許可された文書だけを回答の材料にする

  3. 根拠付きで回答

    引用先を開くときにも閲覧条件を確認

モデルへの指示で隠すのではなく、許可範囲に絞った資料を渡します。

参考:OWASP:Authorization Cheat Sheet / Microsoft Learn:Security filters for trimming results in Azure AI Search

部署で分けるか、案件で分けるか

組織図だけをもとに分けると、兼務や共同案件で行き詰まることがあります。同じ部署でも顧客ごとに担当が違うなら、案件の参加者で制御する方が業務に合います。一方、全員が同じ内容を使う部内マニュアルに細かな例外を付けすぎると、管理が難しくなります。

下表は、共有の実態から選ぶための比較です。複数の条件を組み合わせる場合もあります。大切なのは、資料の責任者が「誰なら読めるか」を説明でき、その変更をシステムへ反映できることです。

表が収まらない場合は横にスクロールできます。

普段の共有方法に合わせた権限の選び方
分ける単位合う資料考えておきたい場面
部署部門内で共通の手順書兼務者や応援メンバーが使う
案件・参加者顧客提案、個別の取引条件担当変更や案件終了がある
文書ごと限られた役割へ共有する資料原本の共有先が頻繁に変わる
保管領域ごと管理主体を分離した資料群横断検索を許す範囲を決める

異動した人が、以前の会話を開いたらどうなる?

説明用の例として、案件を離れた社員が以前の会話で「さっきの原価をもう一度教えて」と尋ねる場面を考えます。新しい検索を禁止していても、過去の回答をそのままモデルへ渡すと、会話の中に残った情報が再び使われる可能性があります。

会話履歴にどの文書を参照したかを残し、再利用時に権限を確認するか、権限変更後は該当会話での再生成を止める方法が考えられます。過去回答の閲覧を残すかどうかは、記録を保持する社内方針と合わせて決めます。一度利用者が保存した情報を、後から完全に回収できるわけではありません。

回答を使い回すキャッシュにも注意が必要です。同じ質問でも、役員と一般社員では読める資料が違います。質問文だけで回答を共有せず、閲覧範囲と資料の版を区別します。複雑さに見合う効果がなければ、機密資料の回答では共有キャッシュを使わない選択もできます。

原本の外へ増えたコピーにも、閲覧ルールが必要

RAGは資料を小さく分割したり、検索向けの情報を付けたりして扱います。原本から作った断片や要約にも、元の文書と閲覧権限を対応付けます。本文を隠しても、タイトルから非公開の案件が分かることがあるため、検索候補に出す情報も対象です。

資料に「別の機密文書も取得せよ」と書かれていても、それは閲覧を許可する命令ではありません。OWASPは、外部文書からモデルの挙動を変えようとする間接的なプロンプトインジェクションを説明しています。検索文書の文面で閲覧権限や利用可能な操作を広げない構成にします。

問い合わせ調査用のログにも、質問と原文、回答が残る場合があります。誰でも開ける管理画面にそれらを集めると、通常の検索とは別の経路で情報が見えてしまいます。記録を読む担当者、保存期間、外部の開発会社へ共有する範囲を決め、必要な内容だけを残します。

参考:OWASP GenAI Security Project:LLM01:2025 Prompt Injection

最初は公開範囲の明確な資料から始めてもよい

権限が複雑で予算が合わないなら、まず全社公開の手順書だけを対象にする方法があります。各社員の機密資料まで広くつないでから制限を足すより、初回の対象を選び、次に案件資料へ広げる際の条件を調べる方が、段階ごとの判断をしやすくなります。

見積には、認証の連携に加え、文書の権限取得、異動の反映、履歴の扱いが含まれるかを確かめます。原本の共有先を変えてからAIへ反映されるまでの時間も重要です。即時に止めたい用途では、定期同期だけで足りるかを調べ、必要な追加処理を見積もります。

依頼先の説明では「権限対応済み」という言葉より、別部署の人、担当を外れた人、権限が取得できない場面をどう扱うかに注目してください。導入前には異なる権限のアカウントで同じ質問を試し、許可された資料は読めること、許可されていない資料は回答や引用に出ないことを確かめます。

検討・発注前のチェックリスト

担当者と確認状況を添えて、社内の検討メモや打ち合わせの議題にご活用ください。

チェックリストをテキストで保存

確認日:________________ / 担当者:________________

  • 全社向け資料と、案件・役割で限定する資料を分けた。確認状況・メモ:
  • 外部AIへ送れるデータの条件を確認した。確認状況・メモ:
  • 元資料の権限を、検索と引用にも反映する。確認状況・メモ:
  • 異動・退職・担当終了後の会話の扱いを決めた。確認状況・メモ:
  • 資料削除と権限変更の反映時間を確認した。確認状況・メモ:
  • 調査ログを読める人と保存期間を決めた。確認状況・メモ:

よくある質問

ファイル共有の権限は、そのままAIにも引き継がれますか?

取り込み方法によります。本文をコピーするだけでは共有条件まで維持されない場合があります。原本の権限取得、検索時の判定、変更の反映を一連の流れとして確認します。

個人名を消せば、社内資料を全員へ公開できますか?

氏名を消しても、原価や非公開の取引条件は残ります。個人情報の加工と、業務情報を誰に見せるかは別の判断です。資料の管理者と共有できる範囲を決めてください。

部署別にAIを作れば、権限設計は簡単になりますか?

参照範囲を絞りやすくなりますが、兼務、異動、会話履歴、管理ログの扱いは残ります。部署内でも資料の共有条件が異なるなら、さらに細かな制御が必要です。

参考資料

製品の仕様・提供条件は変更されることがあります。採用時には公式資料と契約内容をご確認ください。

記事の内容を、自社の検討へ

使いたい資料の共有ルールから相談する

文書の保管先と、誰がどこまで読めるかをお聞かせください。RAGへ取り込む範囲と、段階的に利用を広げるための構成を一緒に整理します。

相談で整理すること

対象業務・開発する範囲・運用の分担。まだ決まっていないことも含めて、一緒に整理します。

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この記事について

編集・発行:株式会社ダンドリ

AI・業務システム・Webサービスの設計、開発、運用を支援する会社です。開発を検討する方が判断に使えるよう、公式資料と公開情報をもとに解説しています。

説明用の例と公開事例を区別し、参照した資料は本文と記事末尾に掲載しています。

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