背景
教育事業者の担当者が、受験生から寄せられる学習方法、進路、大学生活の相談に個別で返信していました。相談が集中する時期は対応の負担が増え、担当者による回答のばらつきも課題でした。現役大学生へのアンケートが蓄積されており、その内容を相談対応に活用することを検討していました。
課題
- 相談が集中する時期に、返信までの時間が長くなっていた
- 一般的なチャットサービスでは、現役学生の経験に基づく回答が得られなかった
- 返信のたびに、担当者が関連するアンケート回答を探していた
- 事実確認や個別の判断が必要な相談も含まれていた
開発時の条件
既存の業務を続けながら導入するため、次の条件を踏まえて設計しました。
- 新しいアプリのインストールを求めず、利用者が使い慣れたLINEから相談できる必要があった
- アンケートに個人を特定できる記述が含まれており、そのまま利用できなかった
- 事実確認が必要な内容や、進路の最終判断に関わる相談は、担当者が対応する必要があった
- 開発担当者がいないため、事業者側で運用できるよう引き継ぐ必要があった
提案
アンケートを検索し、その内容をもとに相談へ回答するチャットボットをご提案しました。回答に使う情報をアンケートの内容に限定し、該当する情報がない場合は担当者へ引き継ぐ設計にしました。
設計のポイント
- 設問と回答の関係を保ってデータを整理
- 回答を細かく分けすぎると文脈が失われ、大きくまとめすぎると無関係な内容が検索されました。設問と回答を対応させたまま、相談に必要な情報を参照できる単位に調整しました。
- 相談の種類に応じて検索対象を設定
- 学習方法、進路、大学生活など、相談の種類ごとに検索対象を分けました。異なる種類の回答が混ざらないようにしています。
- 担当者へ引き継ぐ条件を明確化
- 関連するアンケート回答がない場合や、事実確認・進路の最終判断が必要な場合は、回答を生成せず担当者へ引き継ぐ案内を返す設計にしました。
- 個人を特定できる情報を除去
- アンケートを取り込む前に、個人を特定できる記述を除去しました。新しい回答を追加する際も同じ処理を行えるよう、手順を整えました。
実装内容
- 01相談の分類と、チャットボットが回答する範囲の整理
- 02アンケート回答の加工と検索対象への取り込み
- 03検索方式・プロンプトの設計と、参照範囲の設定
- 04Difyによる構築とLINE Messaging APIとの連携
- 05想定質問での回答確認と、データの分け方・検索範囲の調整
- 06公開後の相談内容に応じた継続的な調整
導入後の業務の変化
導入後の業務の変化をご紹介します。作業時間や売上への効果は、数値での計測を行っていません。
- 利用者が使い慣れたLINEから、時間帯を問わず相談できるようになりました。
- アンケート回答を共通の参照情報として、相談への回答に利用できるようになりました。
- 繰り返し寄せられる相談を自動で処理し、担当者が個別対応に時間を使えるようになりました。
- 事実確認や進路の最終判断が必要な相談を、担当者へ引き継げるようになりました。
今後の改善
- 実際の相談をもとに、回答に必要な情報を追加する
- 新しく集まったアンケート回答を、定期的に検索対象へ追加する
- 担当者に引き継がれた相談を確認し、引き継ぎの条件を見直す

